大和ハウスで見えた型式認定の問題とは

一般の人が連想する「型式認定」という言葉の印象は、「大臣が認めた優れたもの」と感じる人が多いだろうが、こと住宅の「型式認定」はそれとは程遠いものであるということを知る人は少ない。
型式認定とは、建築基準法に定められた仕様規定(部材や組み方、構造計算方法などが定められている)以下のスペックでありながら、一定以上の安全性が確認できたとして、国土交通大臣が認定するもので、その制度をハウスメーカーが同様の形式の家を量産し、量販することを目的に、各社が利用しているものである。
そしてその一定以上の安全性の確認をしたとされる書類の開示が一般に為されないというゆがんだ構図が作られ、ブラックボックス化しているのが現状だ。
平成12年の法改正以前は建築基準法第38条にそれが認定制度が規定されており、38(サンパチ)認定と言われていた時期が続いていた。38認定の時の建物は、私が検分する限りにおいては「検査済証」が取得されていないものが実に多く、認定書の頭書きにある「地耐力3tや5t」という建築の条件すら守られていないものも多く確認した経緯がある。そのような中で大和ハウスの38認定住宅で地耐力の未確認によって沈下を発生させていた住宅の建て直しを認めさせた例もあるくらいである。
型式認定の申請に対して、それを認めて判断する機関は国土交通省の指定を受けた登録住宅型式性能認定等機関が執り行い、現在では建築センターやベターリビングなど数社が業務に当たっている。
過去に個別認定でニチアスというメーカーが自社製品の耐火性能を偽り(あらかじめ水を掛けたものを燃焼試験)耐火時間等を誤魔化す等の認定偽装事件があったのをご記憶の方もおられるだろうが、実は型式認定も同様なプロセスで執り行われているのではないかと疑われるのである。
認定取得に際しては、モデルとなる家の設計図に対して、耐力壁の配置、床の剛性の取り方を考える以前に、柱の形状、鉄骨部材の厚みや太さ、などをコストと見合わせてぎりぎりまで小さく薄くする検討作業を行うのだ。そしてそれらを組み合わせて必要最小限の部材だけで家を造ることを考えるのである。だから型式認定の家は、工務店などに依頼して注文で建てた建物より確実に耐震性能は劣っているということになるわけです。しかしよく考えてみれば地震に強い、良い家を造ろうとする企業が、敢えて型式認定を取得するはずが無いと考えるのが自然であろう。
また一般人に対するテレビコマーシャルで、大手ハウスメーカーが敢えて鉄骨構造であるということをポジティブに広告しているところがあるだろうか?この点から考えても、鉄骨構造そのものの負の性質や、型式認定自体の負の性質に対して説明が困難であるからということが言えるのではないだろうか。
鉄骨構造を採用するハウスメーカー「あとだせぱ」はすべてこの型式認定制度を採用している。理由は本来鉄骨構造というものは2階建て以上の建物を設計しようとする場合、建築基準法第6条1項3号および同法20条2項により、構造計算が必要になるのであるが、その手続きを省略できるのが型式認定なのである。だから挙って鉄骨系ハウスメーカーは型式認定を取得するのである。
では何故鉄骨構造なのかということになるのだが、それは鉄は自由な形状を作ることが出来るのと、工場生産でのプレファブ化に適していることから、量産体制に対して非常に都合が良いということなのである。そして量産が可能になることから、コストを抑えられた利益率の高い住宅が量販され、結果としてハウスメーカーらは莫大な利潤を得るに至っているのである。
ではそのような背景の中で、何故このような違反建築が造られたのであろうか、ということになるのであるが、そこにはいろいろな理由が複合的に関連している。
まず私が今まで検査してきた型式認定住宅で特に古いものでは、検査済の取得が無いものが大変多く確認されているのは前述した通りである。
また特に今回違反が発覚した大和ハウスにおいては、認定の運用が間違っていたり、耐火上の問題の指摘などは、検査したほとんどの住宅で確認されている。
またこの型式認定を悪用しているハウスメーカーもある。
あるメーカーでは鉄骨住宅は型式認定が取得されているが、木造のラインナップに関してはオープン工法(仕様規定で建てなければならない)であるにも関わらず、型式認定のみに容認されている鉄筋の入っていない基礎構造を採用し、建築基準法違反でかつ簡便な施工を継続していたことを指摘したこともある。そしてまたさらにそのメーカーは告示1359号の防火構造基準を守らない、自社の身勝手なシステムでの施工方法による住宅を、永きに渡り量販していた事実を指摘した経緯もある。
では、このような違反行為がなぜ表面化しないのかということに関してだが、まず確認検査機関の在り方の問題があげられる。
確認検査機関は平成12年の法改正において、ハウスメーカーが数社ずつ組んで会社を作ったのである。ERIは大和、ミサワ、ハイム、東日本はヘーベル、積水ハウス、などなどである。
つまり身内が検査に当たるわけだから、負の要素があぶりだされることは無いということだ。だからこれらの確認検査機関は、厳密に言えば第三者機関といっても全く機能しないし、何よりも社会や住宅取得者に向き合って仕事をしているわけではないことがわかる。
次にあげられるのが社員の無能化だ。これに関しては林修先生が興味深い見解をお出しになっているのを見たことがある。
実際私が接してきた型式認定住宅のハウスメーカー社員は、自社の商品である住宅の構造についての問いに対して、即答できた人間がほとんど居ないということがあげられる。つまり型式認定というものの位置づけが社員に全く伝わっていないのである。だからそれが現場の職人にも正確に伝わらない、だから職人は仕事の目的が分からない、だから違反行為が放置されるといった流れである。
一般人の心に響くようなテレビコマーシャルの陰で、このような違反建築問題が放置され続け、更に量販されていたということは、社会として憤るに十分な理由であると思う。
大和ハウスのみならず、押し並べて型式認定住宅を扱う企業は、その企業体質と、の商品である住宅のプレファブシステムの見直しをするべき時期に来ているのではないだろうか。
我が国には、これ以上高額な鉄骨違反建築を蔓延させることは、何とか食い止めたいものである。