CASE004.長野の黒カビ欠陥マンション-1-

売主:長野の㈱地所
施工:民事再生したゼネコン
設計:東京の設計

柱、梁の架構で構成される鉄筋コンクリート造の建物は、柱、梁の変形能力に対し、付随する壁に亀裂が発生しない様、構造スリットが計画される。
また、コンクリートの打ち継部には打ち継ぎ目地、バルコニーや外廊下等には収縮による亀裂を誘発させる誘発目地、外装タイルの浮き、割れ、剥落を防止する為のタイルの伸縮目地等、各部位の用途に応じて様々なスリットや目地が計画、施工されている。
建物調査の結果、本件建物に発生する亀裂や漏水並びに浸水によるエフロは、これらの目地及びスリットの施工不良並びに防水端部の施工不良及び防水の欠落を起因とするものであり、経年やコンクリートの乾燥収縮によるものではない事が明らかである。
また、吹き厚の少ない外壁断熱材により、室内にはカビや結露が発生し、建物の居住性を大きく損ねている状況である。
建物検査で指摘される項目は真摯に受け止め、建物の基本性能並びに居住者の信頼を回復する為の誠意ある対応が、売主の責務であり望まれるものであると考えられる。

欠陥1:構造スリットの施工不良

3階の柱構造スリットはシーリング厚み約4mm、ドリル穿孔によるスリット深さは20mm以下である事が確認出来る。
図面で指定するシーリング厚みは15mm、スリット深さは50mm以上であり、構造スリットの施工不良または欠落であると考えられる。

欠陥2:エフロが発生

柱構造スリット脇の窓下に亀裂が発生し、浸水によるエフロが確認出来る。
亀裂の発生要因としては、開口部補強筋の欠落等が推察されるが、構造スリットの施工不良により、スリットが有効に働かず、柱変形応力の伝播による影響が考えられる。

欠陥3:エフロが発生

外廊下手摺壁に亀裂が発生し、浸水によるエフロが確認出来る。
亀裂脇に施工された誘発目地はシーリング厚みが約4mmであり、機能せず、改善が必要である。

欠陥4:タイル伸縮目地の施工不良

1階側外壁面の柱の構造スリットは、タイル面に目地が確認出来ず、施工状況が不明である。
また、他の目地と同様にシーリング厚みが4~5mmであり、目地施工不良が確認出来る。

欠陥5:打ち継目地の施工不良

7階北妻壁面の打ち継目地のシーリング厚みが3~4mmである事が確認出来る。
シーリング材の厚み不足は付着強度が期待出来ず、材の劣化を早め、漏水を起こす懸念がある為、抜本的な改善が必要である。