ちょっと待て!その構造計算

構造計算書は
現場の施工状況との整合性が無ければ意味がありません

耐震強度偽装事件を受けて、ウチのマンションは大丈夫だろうか?確認検査機関が民間なので心配?また売主も施工業者も信用ならないところなのでどうだろうか?と言ったことから、構造計算の再計算の依頼に関する相談が多く持ちかけられます。また中には危険な可能性があるので行政機関等が再度構造計算などを行ってくれたようなマンションもあるようですが、安心してはいけません。
実はマンションは構造計算通りに建てられていないこともあるのです。

ある事例

私が、TBSの番組を通じて知り合った局の方が居住しているマンションの耐震診断を依頼された時です。耐震診断を目的にする時でも、弊社では必ず現地調査をさせてもらっているので、そこである事実が判明したのです。
そのマンションは耐震診断以前の問題としての、建築基準法違反が複数指摘されるような状況が確認されたのです。具体的に言えば鉄筋のかぶり厚さ不足(違反)による爆裂現象の発生や、防水工事の不履行、更には設計図面との相違など様々な瑕疵と言われるような状況が指摘されたのです。
構造計算は建物が各部位ごとに、法律に合致した施工が為されていることが大前提で計算されているのです。つまり鉄筋のかぶり不足などの違反行為が存在していれば、計算に基づく耐震性能が全く期待できないような場合も考えられ、単に構造計算の見直しでは安全性が判断できないことになるのです。
欠陥住宅は必ず現場で発生するものです、耐震強度偽装事件で国や行政が行った現場を見ずしての再計算は全く意味が無く、現場との整合性を確認する必要があるのです。

● 構造計算の再計算による安全確認は、必ず現場検査を伴わなければ意味が無いものになります。
● 違反や施工不良があれば、構造計算における安全性が全て否定される場合があるのです。
● 構造計算も複数の計算方法があるので、どのような計算方法かによって数値が異なってくるのです。

現場と構造計算が違っていたらどうなるの?

マンションの検査は先ず図面と現場に相違が無いかという観点での精査が必要になります。見た目の問題(柱や梁の太さや、階高や廊下の幅等)だけならある程度のことまでは素人の方でも出来ますが、鉄筋の存否やコンクリート強度となると弊社のような検査機関が行わなくては判断できないことになります。
見た目において明らかに図面と異なるマンションは論外としても、内部において図面と異なるマンションも意外と多いのです。

設計や構造計算が正しいわけではない!

耐震強度偽装事件で姉歯という設計者の不法行為が露呈したわけですが、悪意が無いまでも多かれ少なかれ設計者がミス(偽装?)を犯していることも少なくありません。記憶に新しいことですが、姉歯の構造計算を別の計算方法、つまり限界耐力法という手法で解析したら安全率が高まったという事実もあるのです。また構造計算のやり方も一部平成13年頃に規制緩和を受けているものもあり、実際には何が正しい方法なのかが釈然としないのです。

疑ってみることも大事!

一級建築士は現在約30万人程が登録されています。企業に所属していたり、ペーパー免許や、リタイヤしている人を差し引けば、いわゆる設計者として業務を遂行できて、且つ能力のある建築士はほんの一握りでしかないのです。そのような建築士市場でミスや偽装の可能性は決してゼロではありません。また業界の習慣としてセカンドオピニオンを求めるといったことは未だに全く期待できないことからも、消費者側としては疑う姿勢を常に持つことも大事です。