ちょっと待て!そのマンション内覧会
建築士が同行してもマンションの瑕疵はわかりませんよ!
耐震強度偽装事件発生後に明らかになったことですが、わたしがマスコミの取材で、ヒューザーのマンションに赴き、住人の方々と色々な話をしたときです。
ヒューザーのマンション購入者の実に30%近くの人たち
ヒューザーのマンション購入者の実に30%近くの人たちが、建築士などを同行して購入前の内覧会に臨んでいたという事実があったのです。中には構造図まで見て「高性能」であるといったコメントを残している建築士もいたという事実を知らされました。
内覧会の同行をビジネスにしている建築士達をどうこう言うつもりはありませんが、要は内覧会同行程度でマンションの建物としての瑕疵を判断することは不可能であるということを知っていただきたいのです。
● 「さらば欠陥マンション」を読んで考えてください
● ちょっとでも気になることがあれば買わないことが最良です。
内覧会の時点でマンションの欠陥を判断するには?
マンションはひとつの建物を区分共有するものです。住戸も複数あるので、建物状況から欠陥の影響等が異なってきます。しかし欠陥を判断するには一住戸としてではなく、ひとつの建物としてどうなのかということを見て行かないとなかなか判断できないということなのです。
ではひとつの建物として検査すればということになりますが、それは非常に困難な状況が考えられます。まず売主側が弊社の検査を容認しないであろうということ、更には容認したとしても、マンション一棟検査は個人が負担できないほどの金額がかかるということです。従いまして現実性が見出せないというのが現状です。
マンションの供給は何故こんなに多いの?
マンション建設ラッシュはゼネコンを救うための手段だった
バブル景気が沈静して建設業界が不況になりました。公共事業も削られ、競争力の無い建設会社は倒産や民事再生を強いられました。が、しかし同時に地価も下がったことから、真面目に働いてきた消費者たちにとっては住宅を取得できるチャンスになりました。
そこで大きな規制緩和が為されました。マンション(共同住宅)に限って容積率を大幅に緩和するといった政策です。これにより今までよりも住戸数が多く取れる(3割程度)ことや、一住戸当たりの販売価格が安くなるといったことが可能となり、購買層が一気に拡大しました。その結果必然的にゼネコンの仕事は増え、事業主も商売のボリュームが大きくなるなどの経済効果がありました。
マンション建設のラッシュはこのような理由が原因なのです。
比較的安全なマンションの購入術
耐震強度偽装事件はマンション建設ラッシュを利用して、ひとりの建築士が「我田引水」を図ろうとした結果の惨事です。事業主は少しでも安い、仕事も早い、仕上げも上手など「吉野家」のような建設業者に依頼します。だから建設業者たちは競争力としての安さ、早さ、上手さという名の元の手抜き工事を身に付けざるを得ない環境に追いやられたということなのです。
しかし比較的安全なマンションというものも世の中には存在しています。しかし当然全てではなく確率の問題ですからくれぐれも鵜呑みにはしないでください。
昭和58年~61年ごろに完成したマンション
理由:昭和56年に耐震計算の規定が大幅に改定されました。改定当時は皆慎重に設計していたであろうことが考えられます。しかし当時はオイルショックの余波もあったため、健全に施工されたとすれば58年?61年ごろではないかと考えられます。
密集地のマンション
理由:マンションに限らず密集地における建設工事は、様々な障害があります。施工計画を立てる際にも、周囲の問題や労働時間の問題など制約される要因が多々あります。従って、建設会社としても郊外の広々とした現場と違い、経験豊富かつ有能な現場担当者を配置する傾向が必然的に出てきます。
マンションのリスクって?
マンションを購入しようとする方や現在マンション生活者の方々にとって今後考えられるリスクが何であるかを知っていただきたいと思います。まず現存のマンション供給事業主の中で、経営破綻する会社が相当数出現するものと思われます。また同時に建築に携わったゼネコンも同様に経営破綻することが考えられます。
理由として、2015年、平成25年を境に高齢化社会の到来と共に、住宅供給量が減少するという経済産業省の調査データからもその傾向が必然的となります。また今でも消費者意識が向上してきて、欠陥住宅問題が大きく取り上げられるようになってきているのに、近い将来では更に拍車がかかり、欠陥マンションというレッテルを貼られた業者に存続のチャンスは無くなるであろうことが予測されます。そのような意味からも10年保証などといったことが絵空事どころか、供給側当事者の存亡が懸念されるのです。